術後四日目 覚悟について

隣の部屋で命が一つ消えようとしている。夕べは乗り切ったみたいだが、もう限界が近い様子が、扉越しにも伝わってくる。何年か前に肺ガンを手術し、再発しての入院らしい。既に転移が進み、今まさにその時を迎えようとしている。
これは、本当に他人事ではない。まさに数年後、早ければ一年後にも我が身に起こり得ることだ。勿論、転移も再発もなく無事に十年・二十年と日々が過ぎて行くのが一番だし、俺も強くそれを願っている。
肺がんになっても何となくフワフワしていて覚悟が定まってなかった俺だが、夕べのバタバタで、願いは願いとして、その時の覚悟は絶対必要だと強く思った。退院したら、女房と家族宛てに手紙を書こうと思う。ま、俺は女房にさえ看取ってもらえたら、後は何も要らない、我が儘野郎だけどね。
そんなわけで、癌とは実に「重い」病気だ。